Stryker(ストライカー)は米国ミシガン州カラマズーに本社を置く世界有数の医療機器・医療技術企業であり、整形外科インプラント・神経外科機器・救急医療機器・外科機器など幅広い製品をグローバルに供給している。英国NHS(国民保健サービス)を含む世界各国の病院が同社製品に依存しており、NHS Supply Chainを通じた主要サプライヤーとなっている。
2026年3月11日、イランの親イラン派ハクティビストグループ「Handala」がStrykerに対する大規模なサイバー攻撃を実施したと主張した。攻撃者はStrykerの管理者アカウントを不正に取得し、企業デバイス管理プラットフォームであるMicrosoft Intuneを悪用してグローバルに20万台超の端末をリモートワイプ(遠隔消去)したとされる。Handalaはさらに約50テラバイトのデータを窃取したと主張したが、Strykerは公式にデータ漏洩の有無を確認していない。
Strykerは同日、公式ウェブサイトで顧客向けアップデートを公表し、サイバーインシデントへの対応として製造・出荷システムの一時停止を通知した。この影響で英国NHS病院向けの口腔スワブや除細動器などの医療機器の注文が一時停止し、医療機器の供給が滞るおそれが生じた。
NHS Englandは2026年3月18日、全国の医療機関・NHS Trust向けに供給対応ガイダンスを発出した。NHS Supply Chain・Stryker・物流パートナーのDHLが連携した暫定発注ソリューションが展開され、在庫状況の把握と代替調達の支援が行われた。その後Strykerは段階的に製造・出荷を再開し、2026年4月10日頃までに全製品について通常水準に回復させた。
本事案は正規の企業デバイス管理ツール(Microsoft Intune)を兵器化し、グローバル規模で医療機器サプライチェーンを麻痺させたハクティビスト攻撃として注目された。医療機器メーカーへのサイバー攻撃が直接的な患者ケアの物理的インフラに影響する事例であり、医療サプライチェーン全体のサイバーセキュリティリスクを改めて示した。