ミッドランド地域病院トゥラモア(Midland Regional Hospital, Tullamore)はアイルランド・オファリー県に位置するHSE(Health Service Executive、公立保健サービス庁)傘下の公立病院である。2018年11月14日、Windowsランサムウェア攻撃により病院の検査情報システム(Laboratory Information System)とその関連インフラが暗号化された。
HSEはこの攻撃を「孤立したWindowsランサムウェア攻撃」と説明し、感染はトゥラモア病院のシステムに限定され、HSE全体への拡散は確認されなかったと述べた。攻撃者は検査データを保存・処理するコンピュータへのアクセスを得て、推定8万4,000人の患者の個人データを暗号化した。病院は診療継続計画(BCP)を発動し、患者ケアへの直接的な影響を最小限に抑えた。
本事案はアイルランドのDPC(Data Protection Commission、データ保護委員会)による調査対象となった。2026年6月15日、DPCはHSEがGDPRの複数の条項に違反したと認定した。具体的な違反事項は、(1) 個人データのセキュリティを確保するための適切な技術的・組織的措置の不備、(2) 個人データを処理する第三者との契約に十分な保護措置が含まれていなかったこと(委託先管理の不備)、(3) 影響を受けた患者への情報提供義務の不履行の3点である。DPCはHSEに対して30万ユーロの制裁金と、適切なポリシー・手順の実施を命じた。
本事案はアイルランドで後に発生した大規模なHSEランサムウェア攻撃(2021年5月)の前史として位置づけられ、医療機関における適切なセキュリティ体制と委託先管理の重要性を示す事例として、DPCの調査期間を経て2026年に最終的な法的判断が下った。